旅鴉
外はまだまだ凍てついていて
吐息は白く蒸気を上げた
春はまだかと問いかけるのは
県道沿いの桜の並木
3番ホームの特急列車
飛び乗って街を出て行こう
北風にも少し飽きてしまって
流れる雲を追いかけに
流れ流れてどこへ向かう
行く当てもない旅鴉
いつもの景色置き去りのまま
朝焼け色の空を背にして
白い列車は速度を上げて
知らない街を追い越してゆく
ガラス越しに見つめた街は
よそよそしくてそれも良かった
おかまないなしに走る列車に
負けないように時間も進む
愛すべき日常は膝の上で
穏やかな眠りについている
流れ流れてどこへ向かう
行く当てもない旅鴉
とりあえず今は風の吹くまま
真昼の月がぼやけて見えた
お客もだんだん少なくなって
走り続ける特急列車
終着駅に着いた頃には
春の知らせも届くでしょう
流れ流れてどこへ向かう
行く当てもない旅鴉
旅の終わりは何を思うの
夕焼け空が問いかけている